権力闘争の中で爪を研ぐ…三浦義村の本当の顔とは？鎌倉・横須賀ゆかりの史跡めぐり

2022年11月2日

ふゆき

こんにちは。夢中図書館へようこそ！
館長のふゆきです。

全国の城や史跡をぶらり旅する「夢中図書館いざ城ぶら！」。いま「鎌倉殿の13人」に夢中…。
いざ鎌倉殿ゆかりの地へ！今日の夢中は、権力闘争の中で爪を研ぐ…三浦義村の本当の顔とは？鎌倉・横須賀ゆかりの史跡めぐりです。

■三浦義村

三浦義村（みうらよしむら）。幼名は平六。
相模国三浦を本拠として、鎌倉初期に活躍した有力御家人です。

父・義澄とともに、源頼朝を挙兵時から支え、幕府樹立後は鎌倉で重きをなしました。
義村も源平合戦や奥州征伐に従軍しますが、その存在感が増すのは頼朝没後、幕府内部の権力闘争が激化した頃です。

梶原景時の変（1199年）では、謀反を疑われた結城朝光を助けるために、義村は景時弾劾を画策。
和田義盛や安達盛長と談合して御家人66人による弾劾状を作成し、景時を失脚させました。その後景時は命を落とします。

畠山重忠の乱（1205年）では、北条時政が牧の方の讒言により重忠の成敗を決めると、義村はこれに加担。
重忠の嫡男・重保を由比ガ浜で殺害。さらに重忠討伐軍にも参加し、無辜の重忠を死に追いやっています。

のちに重忠に翻意が無かったことが判明すると、義村は事件の首謀者として稲毛重成らを誅殺。
さらに同年、時政と牧の方が将軍実朝を廃して平賀朝雅の擁立を企むと、義村は北条義時と政子に協力して実朝の安全を守りました（牧氏の変）。

さらに和田義盛が北条氏打倒の兵を挙げた和田合戦（1213年）では、義村ははじめ従兄弟の義盛を味方することを約束しますが、直前になって裏切ります。
北条義時に義盛挙兵を報せると、自身も加勢し義盛軍を撃退しました。結果、義村は一族の和田氏の討滅と引き替えに、自らの地位を盤石なものとしたのでした。

■横須賀に残る史跡

したたかに鎌倉の権力闘争を生き抜いた三浦義村。
彼を御祭神として祀る神社が、横須賀市大矢部にあります。それが近殿神社（ちかたじんじゃ）です。

近殿神社は、創建の時期は不明ですが、この地域一帯は三浦一族の本拠があった場所。後世の里人や三浦氏の末裔が、三浦氏全盛を築いた義村を讃えて祀ったものと考えられます。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で義村を演じる山本耕史さんもTV番組でこちらを訪れました。時空を超えた対面に、義村＆耕史さんは何を思ったのでしょう…。

近くには、三浦氏ゆかりの史跡が数多く残っています。
なかでも、三浦氏が居館を置いた衣笠城は、三浦一族はじまりの場所。そして因縁の場所でもあります。

治承4年（1180）源頼朝の挙兵に呼応して三浦一族は兵を出しますが、当時は平家方だった畠山重忠軍と遭遇し合戦となります。
重忠ら秩父軍は衣笠城まで攻め込みました。このとき、義澄・義村父子は城を脱出できましたが、当主の三浦義明（義村の祖父）は壮絶な戦死を遂げています。

畠山重忠や稲毛重成などの秩父の武将たちは、三浦一族にとっては仇だったんですね…。
のちに義村は重忠らを討ち滅ぼすことになりますが、そのとき彼の胸にはどんな感情が渡来していたのでしょうか…。

■鎌倉に残る史跡

頼朝が鎌倉入りして幕府を開くと、有力御家人のなかでも三浦氏は重く用いられます。
それは、いち早く頼朝に味方したことだけでなく、三浦氏の領する場所にも理由がありました。

相模国三浦は、鎌倉のすぐ近く。鎌倉に有事があったときは真っ先に駆け付けられます。
他の御家人に比べて圧倒的な「地の利」がありました。このことから頼朝は三浦一族に一目置いたものと思われます。

その信頼の厚さは、三浦義村の鎌倉屋敷があったとされる場所を見ても明らか。
建物跡などは残っていませんが、史書から、現在の鎌倉小中学校がある西御門辺りに敷地を与えられたと推定されています。

そこは、大倉幕府（将軍御所）のすぐ側です。その西側には鶴岡八幡宮があります。
御所と八幡宮の間という絶好の場所から、義村はつぶさに鎌倉殿とそれを取り巻く御家人たちの動向をうかがっていたのでしょう…。

頼朝の死後、幕府内部の権力争いが顕在化すると、義村はその抗争を巧みに利用し、自らの権勢を高めていきました。
先に述べたような義村の行跡を見るだけでも、かなりの野心家であり策謀家でもある義村の顔が見え隠れするようです…。

そして建保7年（1219）正月、義村の鎌倉屋敷のすぐ側で、鎌倉最大の悲劇が起こります…。
そのとき、三浦義村はどのような面持ちで事の成り行きをうかがっていたのでしょうか…。鎌倉にとっても、義村にとっても、命運を左右する大きな局面がおとずれるのです。
それは、雪の降る日の凶事でした…。その話はまた、この先のブログ「夢中図書館いざ城ぶら！」で…。