阿野全成ゆかりの川崎「妙楽寺」!「おとうと」と「いもうと」炎環の行方

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

全国の城や史跡をぶらり旅する「夢中図書館 いざ城ぶら!」。いま「鎌倉殿の13人」に夢中…。
いざ鎌倉殿ゆかりの地へ!今日の夢中は、阿野全成ゆかりの川崎「妙楽寺」!「おとうと」と「いもうと」炎環の行方です。

■おとうと

今日の「鎌倉殿13人」ゆかりの地めぐりは、阿野全成(あのぜんじょう)ゆかりの寺へ…。

阿野全成は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でお馴染み、源頼朝の異母弟です。
と言っても、これまでは「お馴染み」ではなく、「そんな人物いたの?」というのが多くの人の抱く印象でしょう。

鎌倉幕府の正史「吾妻鏡」にもほとんど登場しない謎の人物。
ただ、源頼朝と同じ父義朝の血を引く源氏の嫡流…。軽視されたはずはありませんよね。

実際に、兄頼朝も、挙兵したとき兄弟のなかで真っ先に馳せ参じた全成を厚遇します。
頼朝の妻・北条政子の妹である阿波局と結婚、結びつきを強くすると、さらに武蔵国長尾寺を与えられました。

この武蔵国長尾寺が、現在の川崎市多摩区にある妙楽寺であると言われています。
それでは、鎌倉殿の「おとうと」阿野全成に思いを馳せながら、妙楽寺をぶら歩きしましょう。

■妙楽寺

妙楽寺は、神奈川県川崎市多摩区にある、天台宗の寺院です。

この妙楽寺は、源氏累代の祈祷所であった長尾山威光寺との関連を指摘される古刹です。
「祈祷」と言えば、大河ドラマで独特な祈祷スタイルを魅せた阿野全成…。新納慎也さんの怪演で人気を集めましたね。

ここ妙楽寺は、阿野全成がこの地を与えられ、住職を務めたとされる源氏ゆかりの寺院です。
付近には、中世の名残りを伝える地名(別所、堀の内、竹の沢など)も残っています。

いまは、そんな源氏一族の権勢など嘘のように、住宅街の一画にひっそりとたたずむ寺院
境内には、源氏や阿野全成の痕跡を示す遺跡は残っていません。ちょっと残念…。

往時の威光寺はもっと広大な敷地を持っていたものと考えられます。いまの妙楽寺はその一院であったという説が有力なのだとか。
その規模はともかく、この地で頼朝の弟・阿野全成が祈祷していたと思うと胸アツ…。果たして、全成は何を祈祷したのでしょうか…。

ちなみに、妙楽寺は「あじさい寺」としても知られています。
28種約1000株のあじさいが植えられており、6月の第3日曜日には「あじさいまつり」が開催されています。

■いもうと

さて、その後の全成ですが、駿河国阿野荘(現在の静岡県沼津市)を領有し、鎌倉幕府の御家人に名を連ねます。
しかし、自身に流れる源氏嫡流の血が、一介の御家人でいることを良しとしませんでした。

阿野全成館跡(静岡県沼津市)

頼朝の死後、嫡男頼家があとを継ぐと、全成は妻阿波局が乳母を務める千万(頼家の弟)擁立を企み暗躍をはじめます。
しかし、それを察知した頼家に捕縛されると常陸国に配流。八田知家によって誅殺されました。

この辺りのスリリングな展開は、永井路子さんの小説「炎環」のなかの一篇「悪禅師」にくわしく語られています。
こちらはブログ「夢中図書館 読書館」で記事を書いてますので、ご関心のある方はご覧ください。

ここでもう一つ紹介したいのは、その「炎環」のなかに収録されている別の一篇「いもうと」です。
「悪禅師」が頼朝の「おとうと」阿野全成を取り上げのに対し、こちらは北条政子の「いもうと」阿波局を主人公としています。大河ドラマでは宮澤エマさんが演じていますね。

阿波局は阿野全成の妻。全成の人生に大きな影響を与えた女性です。運命を左右した女性と言えるかもしれません。
その全成の命運が尽きる場面も、「いもうと」のなかで描かれています。

頼家は全成を捕縛すると、その陰謀に阿波局も関与していたとして、政子のところにいた阿波局の引き渡しを要求します。
しかし、全成の秘めた野望など与り知らない政子は、これを拒否します。

「禅師(全成)が何をしたというのか…しかも禅師はそなたの叔父ではないか。それを召捕るなどとは…」。

「母上。母上は何か思い違いをしておられませんか。それでも禅師をかばおうとなさるのですか…あなたの子の頼家を害しようとした禅師を…」。

頼家の言葉に、政子ははじめてその野望に気づくのです。義弟・全成と、そして妹・阿波局の…。
その後の政子と阿波局が交わすやり取りは、姉妹のものとは思えない、背筋がひんやりと凍るものです。ご関心のある方は、ぜひ「炎環」の頁をおめくりください。

三谷幸喜さんが大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で描く阿野全成と阿波局(実衣)とは異なる、永井路子さん「炎環」が紐解く「おとうと」と「いもうと」の黒々とした姿がそこにあります。
果たして、どちらが真実に近いのか…。答えは歴史の闇のなかです。

さて、全成の捕縛をきっかけに、北条と比企の対立は抜き差しならないものとなります。
そして、鎌倉にさらなる悲劇が訪れるのです…。それはまた、当ブログ「夢中図書館 いざ城ぶら」で紹介していきます。お楽しみに…。

■基本情報

名称:妙楽寺
所在地:神奈川県川崎市多摩区長尾3丁目9−3 妙楽寺
アクセス:JR・小田急「登戸」駅からバス

ブログランキングに参加しています

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事